舞台「宝塚BOYS」teamSKY公演@東京芸術劇場プレイハウス

 

待ち続けた舞台「宝塚BOYS」がついに千秋楽を迎えてしまった。

当初の予定よりもジワジワとチケットを増やし続け、結果として東京3公演、大阪大千秋楽公演の計4公演観劇することに。見逃すのがとにかく惜しくて、時間と金銭が許す限り、彼らの勇姿を見届けたいと思える作品だった。命を燃やしたアツい夏を走り抜けた彼らと、自転車で伴走するような気持ちで(?)私自身も走り抜けた平成最後の夏だった。千秋楽を迎えた今、演者同様もぬけの殻状態である。

ロスがひどいのは素晴らしい作品に出会えた証拠。ということで本作品の感想を以下の通り述べていきたいと思う。どうぞ興味のある部分だけでもご覧いただければ幸いです…

溝口琢矢さんが演じる竹内重雄について

②今回推しのおかげで過去が清算された話

 

溝口琢矢さんが演じる竹内重雄について

ヅカボ観劇にあたって唯一の反省点はお兄さんチームことteamSEAの舞台を拝見できなかったことである。上原竜治さんVer.の竹内と比較が出来ないので。ということであくまでSKY公演に偏った感想になりますがご了承ください。

本読みをしてから配役が決まったというだけあり、竹内は溝口くんが演じるにはぴったりすぎる配役であった。真面目で、物腰が柔らかくて、落ち着いていて、誠実で、向上心があって。何よりもまっすぐな人柄は溝口くんそのものである。そんな溝口くんas竹内重雄に関して個人的グッときたポイントを大きく2点に分けて述べる。

その1:歌って踊るのが楽しくてしょうがない。楽しくなると周りが見えなくなっちゃうキュートな竹内さん

・序盤、男子部の稽古場に初めて立ち入り、あらゆるものに興味を示す。メトロノームを動かし、自分もリズムに合わせて揺れてみる。ひとりで。かわいい。

・歌の稽古シーン。徐々にコツをつかんで歌うことがより好きになっていく様子がうかがえる。周りの状況なんて関係なし。楽しくなっちゃってビブラートをひとり響かせる。歌うことがやはり楽しくてたまらない、「好きだから歌いたい」という竹内のピュアさも感じられた。

・ダンスレッスンのシーン。最初は星野の後に必死に食らいつき、とにかく真似をしている。しかし段々と楽しくなってしまい、集団からひとりはずれて舞台袖の方へピョンピョン跳ねていってしまう。ここが本当に楽しそう。「なんて楽しいんだ!」と気づいた瞬間の表情に、見る側も多幸感で満たされた。

・男女合同公演の台本を受け取り、嬉々として練習を始める男子部の面々。女性役に自信満々で立候補し、完璧にマリーを演じる琢子…じゃなかった竹内。可愛いさの次元がちがう。乗るときは乗るチャーミングな竹内。

・同じく稽古中。上原さんと一緒にイスと上履きで公園の花を表現しとにかくこれが花だと主張する真面目コンビ。可愛い。わかったよ君らが言うなら誰がなんと言おうとそれは花だ!!!!!!!!あとマリー役をおばちゃんに奪われてやる事がなくなった結果ちょうちょ役に徹するコミカルさ。おもしろかった…

その2:人一倍穏やか、一方で人一倍真っ直ぐで熱い竹内さん

・男子部から2名選抜で大劇場に出演することが決まったシーン。選抜から漏れた竹内はあからさまに表情を曇らせる。眉間にしわを寄せ、重たい空気をまとったまま、隅っこで稽古着から私服へと着替える。(ひとりモソモソと着替える竹内をイケナイと思いつつもがっつり見つめてしまう。背徳感ヤバい。普段から露出はめったになく、膝すら確実に守られ続けてきた彼の着替えシーンはどうしてもね…見てしまいますよね…)(ちなみにタンクトップ姿なんて完全にイケナイものを見てしまった気持ちに。なにせ日頃彼の膝すらめったに見られませんからね…そろそろ黙ります)

あまりの悔しさにベストを後ろ前逆に着ちゃうほど。

・物語前半、他人の生い立ちや生き様についてケチをつける星野に反論する竹内。驚く男子部のメンバーをよそに、「美しいものは美しいと僕は思いたい。」「戦争だったんです。誰もが望まない場所に居るしかなかった。」と星野の前に歩み出て対峙する竹内。星野が去って少しあと、「きれいなものはきれいだ!!」と叫び、やりきれない思いを外へと吐き出す。(そして長谷川は水をこぼす)

序盤で竹内は、戦争中は満州で過ごしていたと語る。そこで上官に戦争について尋ねられ、「戦争は嫌いです」と正直に言ったため、顔の形が変わるほど殴られ、重営倉に入れられたのだと。真っ暗な重営倉の中で、「ああ、ここで死ぬのか」と思っていた矢先、終戦だったと。自らの価値観を曲げず、正直であったがために散々な思いをしたはずである。けれども彼は権力に屈することなく変わらず「美しいものは美しい」という信念を貫こうとしている。なんて屈強な精神の持ち主だろう。華奢な好青年という見た目や、コメディパートでのキュートでチャーミングな振舞いからは想像もつかないほど、彼の精神力は頑強で、その魂は真っすぐなのだ。しかしそれでも新たな時代を、自分なりに生き抜こうとする姿勢はしなやかですらある。

・何年経過しても男子部の動きに進展が見られない。不安に耐えかねた竹内は池田さんに説明を求める。池田さんに何を言われても臆することなく「当たり前の権利を主張しているだけです!」と詰め寄る。ただ穏やかなだけではない、自分が正しいと思う感覚に正直であり、納得のいかない場合には黙っていない、彼の内なる熱さが垣間見えた。(一方で、上原になだめられれば冷静になるのも早い。熱くはなるが独りよがりでもない。竹内の良いところだと思う。)

・ラストシーン、男子部の解散を告げられ涙を流したり、膝から崩れ落ちるメンバーもいる中、竹内は何も言わずに立ちすくんでいる。しばらくして、「小林先生は、僕たちのことについて何か?」と穏やかな口調で池田さんに尋ねる。池田さんが首を横に振ると、一変して力強い声で「小林先生に会わせてください。」「小林先生に、僕たちの気持ちを直接伝えさせて下さい。」と。特に大阪公演9/2に関しては、この語気の切り替えに鳥肌が立つほどだった。静→動、柔→剛への切り替えがスゴイ。それは無理だと諭す池田さんにつかみかかり、「殴られてもいい!重営倉に入れられてもいい!」とこれまでにないほど荒い口調で懇願する。が、池田さんの態度から無理だと分かると「僕たちが過ごしてきた時間は何だったんですか」「僕たちが懸命に生きた時間は…」とボロボロに泣き崩れ、地面に突っ伏してしまう。これほどまでに態度を乱した竹内は見たことがなかった。その切実さに、こちらも自然と涙を流すほど。理不尽で納得のいかないことを受け入れることは、真っすぐな彼にとってどれほど辛いだろうか。それでも重たい空気を打ち砕こうと、涙ながらに歌い始めるのもまた彼なのだ。

 

(圧倒的に「その2」の方が文量多いというご指摘は甘んじて受け入れます。2点に分けた意味あまりなかった…)


■推しのおかげで過去が清算された話

過去記事をご覧下さった方におかれましてはご存知かとは思いますが、私は溝口沼に堕ちるまではジャニーズのファンでした。

毎年夏に「PLAYZONE*1」という名の舞台が上演されていた。こちらは1986年〜2008年まで少年隊が座長として続けてきた作品であり、2010年からは座長が今井翼さんにバトンタッチ。2011年より「PLAYZONE SONG&DANC'N」へリニューアルされ、ストーリー性が省かれた、その名の通り歌とダンスをひたすら魅せるショー形式となった。私はこのSONG&DANC'Nが大好きだった。座長や振付助手の屋良朝幸さんを筆頭に、出演者たちはまさに"魂"で踊る。舞台への熱い思いと、それを証明する汗がほとばしる素晴らしい作品だった。2009年頃から細々と、影ながら応援していた仲田拡輝さん(現:百名ヒロキさん)が初のユニット入りを果たしたのも、この作品がきっかけだった。かつてマイケル・ジャクソンの振付を担当した経験があり、若き少年隊にエンタメのいろはを伝授したトラヴィス・ペイン氏が、仲田くんを始めとした若いジャニーズJr.たちを指導しているという事実が、何よりも眩しく未来を照らしていた。

そしてこの作品の毎年夏の開催は、ファンにとっても出演者にとっても年に一度のお祭りであり、思い入れの強い、大切な作品だった。

それが2014年、青山劇場閉鎖に伴う上演終了を発表。2015年の年初め、1ヶ月間の特別公演をもって、惜しまれながらもその歴史に終止符が打たれた。

劇場を変えて上演を続けられなかったのか。

どんな形でもいいので、翌年からも続けて欲しかった。

どことなく納得感の無いまま、無理矢理に幕は閉じられた。 

 

前置きが長くなり過ぎたが、「宝塚BOYS」の2018年公演が発表され、その概要が判明するにつれて、わたしはこのPLAYZONEと宝塚BOYSとを重ねた。

PLAYZONEにおける目玉的な演出のひとつに、エンディング時にライトが散りばめられた豪華な大階段が登場し、タキシード姿にステッキを手にした出演者たちがその上で踊るというものがある。

過去の宝塚BOYS公演を調べると、上記の光景と酷似した画像が見つかるではないか。当然期待値は高まった。

いざ観劇に行くと、まずレビューの雰囲気や演出がやはり酷似しているように思えた。大階段の上でリズミカルにステップを踏む7人。青山劇場の大階段で、流れるように移動し、ステップを踏む20数名の光景がフラッシュバックした。ジャケットを脱いで中塚さんのソロダンスから始まる演目は、ボレロというジャンルだろうか?あの雰囲気が、PLAYZONEの演目にあった「アンダルシアに憧れて」を想起させた。こちらはフラメンコということで、スペイン繋がりというだけだが…。ヅカボの皆さん、そのまま踊って下さってもいいのですよ…。

レビューはもちろんのこと、作品一本を通して出演者たちが注ぐ熱量がPLAYZONEを彷彿させた。PLAYZONEの当時の出演者たちは、毎年夏をそれに捧げていたし、作品自体を大変愛していた。宝塚BOYSの面々も同じだった。6月の稽古から9月初頭の千秋楽まで、たくさん悩んで汗をかいて、怒涛の日々を過ごしてきたことだろう。そして彼ら一人一人がこの作品を、自分のキャラクター、自分以外が演じるキャラクターを、心底愛していた。この熱さが私にとってはPLAYZONEに匹敵していたし、むしろ超えていたと言っても過言ではないだろう。

真夏の日光に照りつけられ、蒸した空気をかき分けて劇場に通う感覚も久しぶりのことだった。「夏に劇場に通う」という記憶が上書きされた気がする。通うというほどの数でもないけれど。

戦後を生きた宝塚男子部の彼らに感情移入し涙を流すことで、私の心も浄化されたようにも思える。

 

とにもかくにも、宝塚BOYSという作品に出会えたおかげで、私はまた推しの凄さを思い知った。彼の頑張りのおかげで、彼が演じるキャラクターを大好きになった。そして他の登場人物に対しても同じである。9名が9名とも、人間味に溢れていた。良いところもあればちょっぴりダメなところもある。全てがまるっと愛おしかった。宝塚男子部という影の存在を知り、これまで触れたことのない名曲に心を打たれる経験をした。さらにかつての少しだけ悲しかった思い出を上書きすることさえできた。

毎度同じ文言で記事を締めくくっている気がするが、今回もまた溝口くんありがとうの気持ちでいっぱいである。宝塚男子部の皆さん、ありがとう。いつかまた会えますように。


とりあえず円盤早よくれ~~~~~~~~~~~~~~!!!!

*1:PLAYZONE」について、詳しくはこちら

PLAYZONE - Wikipedia